これこそ偽装

 これまでの連載で言及したとおり、現状ではRFIDを採用したトレーサビリティシステムは、バーコードや2次元コードより必ずしも優れているとはいえません。しかし、先端技術であるRFIDが与えるインパクトは2次元コードの比ではありません。「RFIDを導入するぐらいコストが掛かっているのだから、安全管理は徹底している」という印象を消費者側に植え付ける効果があります。

 今後、中国と同様に国内企業の中からも、偽装表示がないことを消費者側に証明するために、2次元コードではなく、あえてコストの高いRFIDを選択し、高度トレーサビリティシステムを構築する動きが出てくるかもしれません。

そもそも、我々は何をやりたいのだろうか。本来、必要でもない巨大な仕組の有意性を訴え、糊口を凌ぐために群がることか。
パブリシティのために、余分な費用をかけ意味のない先端システムを導入するという戦略をとることが必要な場合も、世の中にはあるのだろう。ただし、それを当然のこととして、そこに便乗し、利権のおこぼれにあずかることをよしとしてはいけないのではないか。巨額な費用をかけた割りに、全く効果を生んでいないシステムが何と多いことか。(特に、お役所系には)
ベンダーとしては、導入効果にも責任を持った上での先端システムの提案を行いたいものだ。システムを提供する側のモラルとはそういうものではないだろうか?

 実際のところ、偽装表示を防止するという観点から対策を突き詰めていくと、システムの問題ではなく製造者側の意識問題となります。モラル欠如が行き着けば、いくら高度なトレーサビリティシステムが構築されていようと、ごまかしようがあるのですが、危機管理能力の向上にはつながります。

同時読取ができたり、追記が可能であったりと、バーコードでは実現できないような優位点を活用したソリューションを生み出し、今までの技術では実現できなかったサービスを提供するということが、我々の行うべきことだということを忘れないようにしたいーと、自戒の念を込めて記す。

上記引用は、全て、安心・安全へ活用現場を広げていくRFIDの未来 − @ITより